夫の正しい躾方 15話(慧視点)

 
 心身共に満足した昨夜から一夜明け。



 俺は歩が作ってくれた温かい朝食を食べ終えると、いつも見る朝のワイドショーを眺めながらソファーの上で寛いでいた。
 今日は土曜日。1日中ダラダラと出来るのが魅力的な日である。
 くわぁっ、と欠伸をしていると、ほとんど牛乳じゃね? っていうぐらい、牛乳が大量に入ったコーヒーが入ったグラスを手に持つ歩が隣に座った。
 欠伸をして涙が浮かぶ目元を擦りながら、俺は歩をチラ見する。
 昨日……と言うか数時間前まで俺に喘がされていたからか、若干眠そうである。
 しかし、少し短くなった髪の隙間から、赤く色付いたキスマークがその存在を主張するように俺の目に飛び込んでくる。
 首の後ろ側という歩からは見えない所───しかし、後ろから見れば直ぐ目に付く場所にあるソレに俺はニヤニヤしながらそこに指を伸ばした。
「うひぃ!?」
 急に首筋を触られて驚いたのか、歩が手からコップを落としそうなぐらい体をビクリと跳ねらせた。
 うーむ、色気はだいぶ出てきたみたいだが、中身はあまり変わらぬようだ。
 キュッと眉間に皺を寄せ、なにすんのよーと言った感じに睨まれるが、俺はその視線を無視して指をキスマークの場所から徐々に上へと上げて行く。
 首筋から頬に掛かる髪の毛を耳に掛けてやり、手の甲で優しく歩むの頬を撫でてやれば、歩は顔を赤くさせながら俺の好きな様にさせている。
「…………なぁ、こっちに来いよ」
 未だに情事の余韻が燻っているらしく、頬をうっすらと赤色に染めながら、歩は俺の脚の間に座る。
 歩の腹に両腕を回し、右肩に顎を乗せながらその華奢な首筋に唇を付けた瞬間───。


 ぴよぴよぴよぴよ。


 なんとも気の抜けるヒヨコの鳴き声が、俺の動きを止めた。
「あ、いっけなぁーい!」
 歩はテーブルの上に置いてあった自分の携帯を取ってヒヨコの鳴き声(どうやらアラーム音だったらしい)を止めると、焦った感じでテレビチャンネルを操作した。
 何だ? と思いながらテレビ画面に目を向けると。
「ふぅ〜。危うく見逃すところっだったわ」
「……………………」


 一昔前に放送されていたマンガが、まぁそこそこデカイんじゃないかと思われる我が家のテレビ画面にドドーンと写っていた。


 今や懐かしきオープニング曲を聞きながら、俺は固まっていた。
 ふふんふんふんふ〜ん、と調子っぱズレな鼻歌が悲しいぐらい俺の耳へと流れてくる。


 あれか? 俺はマンガに負けたというのか?


 そんな疑問が頭の中に思い浮かぶも、ふと、歩の顔を見て確信する。
 今まで潤んでいた瞳は好きなマンガを見れるという嬉しさに輝き、えっちぃー気分とは全く逆の興奮で目元を染めている。
 今や歩はグラスをテーブルの上に置き、テレビチャンネルを手の中に握り締めながら俺に凭れ掛かかり、万全な『テレビを見る体勢』を整えていた。
 先ほどの艶やかな雰囲気はそこには全く存在せず、俺の男としてのプライドが崩れ落ちそうになる。
 ムッとしながら、ゴソゴソと歩の服の裾から両手を挿し込み、意識を俺に向け直そうとした。
 珍しくブラジャーをしていない両胸を、すっぽりと包み込む。
 まずはゆっくりと下から持ち上げ、その乳房の柔らかさを楽しみながら、次に少しずつ指に力を込めてグニグニと胸の形を変えるように揉み出す。
 胸を揉みながら、歩の首に唇を付けて時々吸ったり舐めたりした。
「…………ん…………やぁ……」
 首を竦めながら、俺の手を服の上から掴んで止めようとする歩。
「やっ……慧君……ちょっと、今は……」
「気持ちいい?」
「ちがっ、お願い。今すごくいい所だ───い゛ぅっ!」
 親指と中指で、ぷくっと立ち上がり掛けていた両乳首を挟んでちょっと強めにコリコリと摩ってやると、上半身を前かがみにして「あぅ、あ、やぁっ!」と可愛らしく啼き出した歩にニンマリとする。
 よし、後もう少しで落ちる───と思ったら。


「う゛ぁっ、た……ぃた……や、やめ……や…………やめてって言ってるでしょーっ!!!!」


 大声を出して振り向いたと思ったら、めっちゃ怖い顔で怒られた。
 ギンっと鋭い目で睨みつけられたかと思うと、乳首を摘んでいた手をそこからベリッと離すも、そのまま俺の手を乳首から乳房へと置く。
「先っぽは触らないで。痛いから、や。おっぱいならいくら触っても構わないから……ね?」
 歩はそう言うと又画面へと顔を向け、俺に凭れ掛かり、ふふふと笑いながらマンガを見ていた。
 むにゅむにゅと柔らかな胸を揉みながら、歩の小さな頭に顎を乗せた俺は虚しさに泣きたくなった。

 俺、なんか自信無くしそー。

 今まで付き合ってきた女なら、先程歩にやった事をすれば、嫌そうな素振りを見せながらも俺との一時(ひととき)を楽しむために快く体を差し出して来た。
 なのに……な・の・に!
 漸く胸で感じれるようになってきたから、敏感な乳首を攻めてみたら「痛い」と言われるし、最後は小さな子供に言い聞かせるような言い方をされてしまった。
 俺はムッスーとした顔をしながらも胸を揉み続け、マンガが終わったら心置きなく歩を襲おうと心に固く決意するのであった。





 それから30分後に、漸くマンガが終了。
 あー楽しかった、と呟く歩に俺は直ぐ様行動を起こした。
「歩、俺ちゃんと今まで大人しく待っててやったんだから、もう待たねーぞ?」
 足の間に座っていた歩を抱えてソファーの上に押し倒し、驚いて目を白黒させている隙に腕を上げさせて服をキャミソールごと脱がせる。
 そして、腰に手を回してスカートのファスナーを下ろし、パンツと一緒に下に引き下げ裸に剥いた。


 ここまでの行動、実に10秒ジャスト。


 今歩が身に付けているものといえば、冷え性対策の為に履いているピンク色のモコモコ靴下くらいだ。
「やだぁっ!?」
 顔を真赤にした歩が自分の体を両腕で抱えるようにして、くるりと俯せになった。
 それを見て、俺はニヤリと笑う。
 テーブルの上にあるチャンネルを取ってテレビの電源を消してから、俺は両腕を俯せになった歩の腹の下に回し、「よっと」と言いながら歩の腰を浮かせた。
 顔をソファーの上にくっ付け、腰だけを高く浮かして膝立ちをしている姿に、俺の息子がビクリと反応した。
「え? あ、やぁっ!?」
「ほら、暴れんなって。今気持よくしてやっから」
 立てている膝を自分の足で大きく開かせて閉じられなくしてから両手を尻に置き、力をちょっと入れて左右に広げる。
 明るい部屋で見るからか、そこが羞恥の為か膝を立てて力を入れているためか、膣口がピクピクと動いているのが良く分かった。
「…………ふぅんっ」
 尻に手を当てたまま、ふっくらと膨らむ双丘を親指で左右に広げ、顔を寄せてクリから全体をねっとりと舌の表面全体を使って舐めると、鼻から息が抜けるような声が聞こえてくる。
 ちゅぶちゅぶ、くちゅっくちゅ、と音を立てながら舐め続けていれば、漸く体が反応して濡れてきた。
 握り込んだ拳を口に当てて必死に声を押さえているが、漏れ聞こえてくる啼き声に口の端が釣り上がる。
 ズズッと音をわざとさせて濡れでたモノを啜ってから、舌先を暖かくも狭い歩のナカに潜り込ませる。
「くぅ……っ……や、ぁ……」
 歩のナカを味わいながら、右手の人差し指で一番敏感な突起を包み込む皮を優しく剥き、中指の腹でくりゅくりゅと力を入れすぎないように撫で回す。
「い゛、ぅはっ!?」
 ビクビクと震えながら跳ね上がる腰を左手で引き戻し、剥き出しになった突起を少し力を入れて小刻みに揺すると、歩の中に入っていた俺の舌が締め付けられた。
 どうやらイッたみたいだ。
 きゅっきゅと締め付ける膣内にグッと舌を差し込んで中をぐるりと舐め回してから、ちゅぷっ、と音を立たせてそこから口を離した。
 顔を上げれば、まるで全力疾走をした後みたいに肩で息をする歩が目に入る。
 汗でしっとりと濡れた背中が激しく動いていたが、ソファーに潰された胸も動きに合わせてグニグニと動いている。
 手を離せば落ちてしまう腰をそのままの高さに維持させながら、俺は片手でスウェットのズボンを脱ぐと、『準備万端いつでもOK!』な状態の息子を、濡れている中にゆっくりと沈み込ませた。
「や……ふ、くぅぅぅぅ!」
「こら、逃げんな」
 上へと逃げようとする腰を掴んで引き戻し、歩の背中に胸がくっ付くまで上半身を倒して、きゅうきゅうと絞めつける中をグッグッと腰を押し付けるように進む。
 完全に息子が中に入った後、俺は歩の体を両腕で抱きしめながら体を起こした。
 ソファーの上に膝立ちになった俺と共に、身体の力が抜けているのに『俺』を受け入れた状態で自分も起き上がり───自身の全体重で『俺』を飲み込んだ為にいつもよりも深く咥え込むこととなった歩は首を振った。
「ぅあっ、ぁ、ぁぁ……ふ、かぃぃ……」
「……は、気持ちい」
 俺の太腿を掴みながら頭を俺の肩に置いて凭れ掛かる歩の腰を掴み、円を描くように───敏感な突起も一緒に刺激するように性器同士を擦り合わせて動かすと、歩はもう一回イッた。
 持って行かれそうになるのをグッと我慢して、自分と歩が繋がっている所に指を伸ばし、みっちりと限界にまで広がって俺を受け入れ、イッた余韻でピクピクと動いている所を労るように撫でた。
 それにも反応してきゅきゅんっと締め付けるソコに笑うと、俺は歩の片足を持ち上げて、繋がったままグルリと歩の体を回してお互いが向かい合うようにした。
「ひゃぅ!?」
「ほら、腕を俺の首に回して。じゃないと落ちるぞ?」
「……え? ───あっ、やぁぁぁっ!?」
 俺は歩の背中と尻に腕を回すと、繋がったままの状態で立ち上がった。
「うぐぅぅ……っ、や、ぁぁ」
「動くぞ」
「まって、まって、う゛ぁっ!? やぁ! く、るしぃよぅ」
 俺の首に腕を、腰に両足を回して掴まっている歩は、先程よりも更に奥に入り込んでいる『俺』が苦しいようである。
 しかし、歩くたびに締まる中に思う存分に腰を振りたくなるのが辛い。若干早足になる。
「ちゃんと掴まってなきゃ落ちるぞ」
「っ、くぅ……ふっ、ふぅっ、もうや、だぁ……」
「ほら、寝室に着いたよ」
 昨日の情事の名残など全くない綺麗なシーツが敷かれたベッドの上に、繋がったままの状態で上がると、そっと歩の体を横たえた。
 俺はそのまま歩の足首を掴んで膝を折り曲げさせると、ちょっと上体を倒しながら腰を動かした。
 歩の中から自身を引き出すと、溢れる愛液が絡み付いているのが目に入る。
 グッともう一度中に押し込むと、ぐぷぐぷと音をさせながら柔らかな肉壁の中へと沈み込んでいった。
 それを一定の速さで繰り返していると、視覚と共に『俺』への刺激によりだいぶ呼吸が荒くなってきた。
 しかし。視線を歩に向ければ、歩の呼吸は荒くなってはいるが気持ちいいと感じているようには見えない。
 動きと共に出される「は、はぅ、はっ」と言うような呼吸音は聞こえてくるが、クリを弄ったりする時のようには反応しない。
 まだまだ『中』だけで感じる事は遠い道のりの様だ。


 まぁ、これからゆっくりと開発していきますか。


 俺は腰を振りながらそう思いつつ、一旦ギリギリまで引いた腰を根本まで押し込んで貫き、お互いをピッタリと合わせた。
 そして、クリも一緒に摩する様にお互いの性器をくっ付けたまま上下に腰を動かしたり円を描くように腰を回す。
「うぅ……ぁ、っ、ぁぅ、んあぁっ!」
「はは、やっぱりクリが一番感じやすいか」
 急に色付いた声に、口元がにやける。
 しかし、漸く感じ始めた歩の体ではあるが、まだまだイクまでには時間がかかると思われる。
「っく……やべっ、俺もう出したくなってきた」
 少し歩には悪いが、先にイカせてもらおうと思う。
 繋がったままの歩をひっくり返し、先ほどのソファーの上と同じ様な───足を開いて腰だけを上げている格好にさせると、その背中に覆いかぶさり、歩の身体の直ぐ横に両肘を置いてから、両手を歩の脇の下から通して両肩を掴んで歩の身体が動かないように固定した。
「ふ、くぅ……っ、はぁっ、はぁっ、ぁ、くぅぅぅっ」
「やぁ、ぁ、ぁぁぁ! け、く……は、げし……」
 上に逃げようとする身体を肩を掴んでいる手で下に戻し、歩の肩に額を当てながら全力で腰を振り続ける。
 後で必ず気持よくさせてやるからな、と先程までは考えていたが、今は自分の欲望に忠実になっている体は徐々にそのスピードも上がって来ていた。


 もぅ……イきたい! イきたいけど、もう少しだけこの気持ち良さを味わっていたい!!


 噛み合わせている歯の隙間から、声にならない音が漏れる。
 スピードは変えぬまま、腰の位置をずらして貫くポイントを変えてやれば、歩の中がキュンキュンと締まるし、耳元で聞こえてくる声も腰にキた。
「ぅあ゛……っ、もうだめ、だ……でる……」
「ぁぁ゛、い゛っ……もぅ……は、やく……あ゛ぁっ!」
「でる……あ、っく……あゆ、む、あゆむ。好きだ……好きだっ!!」
「あ゛っ、ぁ、ん゛……ぁ、 けい───ひぃんっ!?」
 叫びながら右手だけ肩から外し、ベッドの間で潰れていた胸を下から手を入れて握り込む。
 ググッと握ってから、興奮でぷっくりと立ち上がっている乳首を指と指で挟んで潰すと───ビクリと体を震わせ、悲鳴と共に『俺』が入っている中を締め付けた。
 その強力な絞り込みに、遂に我慢の限界が来た俺は先端を奥の奥へと突き刺し、溜まっていた欲望を全て歩の中に注ぎ込んだのであった。





「あゆ、大丈夫か?」
 歩むを潰さない様に横へと倒れこみ、呼吸が落ち着いてから自身と歩の体を綺麗にして、まだまだ呼吸が荒い歩の肩を撫でながら労る。
 暫く肩や切ったばかりで短くなった髪を弄っていると……。
「慧君」
「ん?」
「もう一回」
「もう一回?」
「うん。もう一回……言って……欲しいなぁ」
「言う……って、何を?」
 急にどうしたんだと首を傾げる俺に、歩はもぞもぞと体を動かして俺にぴっとりとくっ付くと、上目遣いでこう言った。


「好きだ……って、言って?」


 ぐはぁ、と倒れた。
 まだ情事の名残で潤んでいる瞳で見上げられながら、そんな可愛らしいおねだりが来るとは思ってもみなかった。
 っていうか、俺、ヤッてる最中にそんな事言って……言って……言ってたな!
 いやぁー! と叫びだしたい気持ちを何とか抑える。
 基本、俺はヤッてる最中に「好き」だの「愛してる」だのとは言ったりしない。
 特に「好き」と言う言葉は尚更言わない。
「愛してる」という言葉を普段言い慣れないせいか、「愛してる」<「好き」と言った感じで、「好き」という言葉の方が「愛してる」という言葉より自分の中で重く感じられるからだ。
 だから、今まで付き合って来た彼女やセフレには、SEXをしている最中に戯れやその時の雰囲気で耳元で「愛している」と囁くようにしていたりする事もあった。
 が、「好きだ」と言った事は無い。


 それを無意識にヤッている最中に叫んだと言う事は……。


 期待の眼差しで俺を見上げる歩を自分の腕の中に囲むようにして閉じ込め、その小さな頭にキスを落とす。
「俺、自分が思っている以上に……お前の事が大切なのかもしれない」
 ぼそりと呟いた言葉は聞こえなかったらしい。
 きょとんとした顔で見詰める歩に何でもないと頭を振ってから、ぎゅっと腕に力を入れて、次は聞き漏らさないような声でこう言った。




「俺は、お前の事が大好きだって言ったんだよ」
 

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