「あぅ……ん……」
胸の先に走った刺激に、目が覚めた。
素肌に直接触る大きな手が、ゆっくりと下から上に持ち上げるようにして動く。
そして、時折動く指が乳首を掠めていた。
私は重い瞼を押し上げ、目を開ける。
ボーッとする頭で回りを見渡すと、部屋の中はもう明るかった。
近くに置いてある時計を見れば、朝の6時15分と表示されている。
起きなきゃ、と思うも、私の背後で胸を寝ながら揉んでいる慧君が邪魔で起きられない。
私は胸を揉む慧君の手を掴むと、いつもやっているようにポイっと投げた。
すかさず、私は体を回転させて慧君から離れる。
「…………むん?」
「はい、どうぞ」
揉む胸が無くなり、指を動かしながら眉間に皺を寄せて唸る慧君に、ビーズクッションを与える。
もみゅもみゅもみゅ……と、ビーズクッションを寝ながら揉む慧君を見てから、私はクローゼットの中から下着と服を取り出し、着替えてからそっと寝室を出たのであった。
髪をシュシュで片側に止め、エプロンを付けた私は朝食の準備をしていた。
お湯を沸かしながら、テーブルに並べられたお皿に、半熟に焼いた目玉焼きと、カリカリに焼いたベーコンをのせる。
それから、焼いたトーストを1枚違うお皿にのせた後、ジャムとバターをテーブルの上に用意したその時───。
「おはよう御座います」
ちょうど客室から古嶋さんが出て来た。
スーツのズボンとワイシャツだけを身に付けただけで、とてもラフな格好をした古嶋さん。
頭には、ぴょんと飛び出た寝ぐせがあった。
いつもピシッとした格好でスーツを着こなしている古嶋さんの、初めて見る姿に自然と笑みが溢れる。
「おはようございます、古嶋さん。よく眠れましたか?」
「はい……お恥ずかしながら、ぐっすりと寝ていたようで」
「疲れが溜まっていたんですね」
恥ずかしそうな顔で頭を掻く古嶋さんが、とても可愛く見えた。
「あ、朝食を用意したんです。食べて行って下さい」
「いいんですか?」
「もちろんです。以前うちに泊まった時に朝食は軽めがいいと言っていたので、トーストと目玉焼きとベーコンだけですが……よろしかったですか?」
「はい、ありがとうございます」
「では、お先に顔を洗って来て下さい。それから朝食にしましょう」
古嶋さんに新しいタオルと歯ブラシを手渡すと、洗面所に案内をした。
古嶋さんが顔と歯を磨いている時に、私はもう少ししたら起きて来るであろう慧君の朝食の準備に取り掛かった。
慧君の今日の朝食は、昨日の夕食の残りと、秋刀魚の塩焼きと、山芋の千切りと、若竹煮と、揚げ豆腐と長ねぎの味噌汁であった。
テーブルの上に慧君の朝食を並べ終えてから、向かい側の古嶋さんの朝食と見比べてみる。
「……う〜ん。慧君は痩せの大食いなのかしら?」
首を傾げていたら、古嶋さんが洗面所から出てきた。
寝癖がついていた髪の毛も、きちんとセットされていた。
「あ、古嶋さん、こちらの席にお座りください」
「失礼します。───凄い量ですね」
椅子に座った古嶋さんが、自分の反対側に置かれた朝食を見て、少し顔を引き攣らせていた。
「慧は、朝からこんな大量のご飯を食べてるんですか?」
「そうですね、ほぼ毎日これくらいは食べていますよ」
「……毎日ですか。ハハハッ。凄いな」
虚ろな瞳でハハハと笑う古嶋さん。笑い声が乾いてます。
「それよりも、古嶋さんはコーヒーと紅茶、緑茶のどれを飲まれますか?」
「あ、それでは、コーヒーで」
「はい」
「では、いただきます」
「どうぞぉ」
ドリップコーヒーの袋をカップに掛けて、沸いたお湯を注いだ。
部屋の中に、コーヒーのいい匂いが漂う。
コーヒーカップを古嶋さんの前に置き、それから私も席に座った。
私は焼いたパンにジャムを付けて食べながら、慧君とは全く違う男の人と過ごす朝の一時に不思議な感じを覚えた。
なんか……そわそわするな。
ただ、起きて来ない慧君を抜かして古嶋さんと朝御飯を食べているだけなのに……こぅ、なんといいますか……。
浮気をしている気分になるのは───ナンデダロウ??
目だけきょろきょろと動かしていると、それに気付いたらしい古嶋さんに笑われてしまった。
「僕がいると、落ち着きませんか?」
「え!? あ、いえ、すみません」
バレたのかと思い、かぁ〜っと顔に熱が集中する。
慌てて謝ると、クスリと笑われた。
「あははっ。本当に可愛いですね、歩さんは」
古嶋さんはコーヒーを一口飲むと、首を傾げながら私を見詰めた。
「慧が羨ましいですね。───慧よりも早く歩さんとお会いしたかった」
「え? ……それは、どうしてですか?」
不思議に思ってそう聞いたら、古嶋さんはにっこり笑ってこう言った。
「そうしたら、歩さんを僕のお嫁さんに貰っていたからですよ」
古嶋さんの言葉に、私の体はピキンと固まる。
それから、あわあわと視線を四方八方に泳がせた。
古嶋さんは、そんな私を見ながらまた笑っていたのだった。
誂われたのだと気付いた私が、一言文句でも言ってやろうと口を開こうとした時───。
ガチャッ、とドアの開いた音が聞こえた。
ふと、音がした方へ視線を向けると、スウェットパンツにTシャツを着ただけの慧君が、私達が座る食卓テーブルに歩いて来る所だった。
「お、おはよう、慧君」
「おはよう、慧。悪いが、先に朝食を頂いていたよ」
「……はよ」
慧君は、ボソッと呟くように挨拶すると、ドカリと椅子に座った。
私がご飯を慧君に渡すと、慧君はお箸を持って黙々と朝食を食べ出したのであった。
「…………スゲェな。見てるだけで腹が膨れそう」
大量にあった朝食が慧君の胃袋に消えて行くのを見ていた古嶋さんが、口に手を当ててそう言った。
「あの、古嶋さん。食後のお茶でも飲まれますか?」
「あ、いいえ。もう帰ろうかと思っていた所でしたので、大丈夫です。ご馳走様でした」
「え? もうちょっと、ゆっくりして行けばいいじゃないですか」
「そうしたいのも山々なんですが、少し片付けなければならない仕事がありましてね」
そう言った古嶋さんは、立ち上がって食器を台所に運ぼうとしたので、私は慌ててそれを止めた。
「そのままにして下さい。それよりも、帰ってからのお仕事頑張って下さいね」
「ありがとうございます」
古嶋さんは、ネクタイを締めてジャケットとコートを着ると、黙々と朝食を食べ続ける慧君に声を掛けた。
「慧、世話になったな。んじゃ、また明日会社でな」
「……ん」
箸を持った手で手を上げて挨拶する慧君であるが、玄関に向かう古嶋さんを見送りする気は無いようである。
仕方が無いので、私1人でお見送りして来たのであった。
古嶋さんが帰り、朝食も食べ終わった私達はリビングのソファーに座りながら、ボーッとテレビを見ていた。
いつもなら1人で見ているテレビ。
今日は慧君がお休みで、一緒に見ているのだが……。
「………………」
「………………」
居た堪れない位の沈黙が部屋を覆う。
なんでこんなに空気が重いんだろう……。
この重苦しい空間から離れるべく、「洗濯物でもしてこよっかなぁ〜」と言いながら立ち上がりかけた私は───隣に座っていた慧君に腕を掴まれ、立ち上がることが出来無かった。
どうしたの? と声を掛ける前に、慧君は私の腕を掴んでいた手を引いて、私を慧君の脚と脚の間にポスンと座らせた。
そして、そのままの体勢でぺろりと首元を舐められた。
「うひゃ!? あぁ、うぅんっ」
温かい舌が、首筋をねっとりと舐め回していく。
「……気持ちいい?」
首元から顔を上げた慧君は、私の耳元で囁くようにしてそう言った。
固まったまま何も言わないでいると、慧君はそままモソモソと手を動かしだした。
「あの、ちょっと慧君?」
急に着ている服の裾───それも中に来ていたキャミソールごと、上にたくし上げられた。
「ちょちょちょちょ、ちょっと、慧君! 何をしてるのカナ!?」
「なにって、これから楽しい事をしようかと」
「え? ちょ、んやっ!?」
お腹から胸へと手を滑らせた慧君は、いつもは乳房から先に揉むのだが、なぜか乳首から弄ってきた。
「ふむ。膨らみはあまり感じないけど、先は程々には感じる───っと」
慧君は、何かを呟きながら左手で左の胸全体を揉み、右手で乳首を弄っていた。
乳首を中指と親指で挟まれ、クリクリと摩られると、そこから全身にピリピリとした感覚が走る。
前屈みになり、慧君の手から逃れようと思うも、体を動かそうとしたら、乳首を摩る力が強められて「はぅぅっ」と声が出てしまった。
そのまま、少しの時間胸を弄られた。
「そろそろいいかな?」
慧君は私の両脚の間に膝を入れて、脚を大きく開かせると───。
左手をおもむろに股間へと伸ばした。
「やぁっ!?」
スカートの中に侵入してきた指に、ツゥーっと、ショーツの上から割れ目をなぞられる。
指は一度撫でるぐらいでは終わらず、そこを何度も往復した。
「んん……っ、いや、こんな明る、い……時間に、なに───ひぅぅ!?」
ゆるゆると割れ目を撫でていた指が、急にショーツの横から侵入してきて……中指の第二関節までを入り口に突き入れられた。
「……濡れてないな」
「いやだ、慧君。お願い、抜いて」
身体の中心に、突き刺さるような痛みが走る。
身体が強張り、ぎゅぅ〜っと中に入っている指ごと締め付けてしまう。その為、膣の中に入っている指がダイレクトに感じられて、痛みと異物感に呼吸が苦しくなる。
「落ち着け、歩」
「……む……りぃ……」
「大丈夫だから。ほら、こうすると気持ちいいだろ?」
イヤイヤと首を横に振る私を無視して、慧君は左手を弄っていた胸から離すと、そのまま股間の方へと伸ばして行き、プクっと突き出てきた突起をくるくると円を描く様にして撫で付けた。
「ぅやあぁぁ!?」
じんわりとした気持良さが、足の付根から広がっていく。
そして、ジュンっと中の方から温かい物が溢れてきた。
「ふぅ、やっ、もうやだ……とめ……ひぁっ!」
「お? 段々滑りが良くなってきたじゃん。───でも、まだまだ足りねーな」
私の中から指を一旦抜いた慧君は、ほっと一息付いている私の身体の位置をクルリと変えて、ソファーの上に寝かせた。
それから、私の両膝の裏を手で持つと、腰を少し浮かせてショーツをサッと抜き取った。
あまりの早業に、抗議の声が出て来なかった。
驚きに固まっていると、脚をそのまま肩の近くまで近付けるようにして、持ち上げられた。
左右の膝が、肩の近くまで付くように身体を折り曲げらると、そのままの状態をキープしながら、一度膝裏から手を離した慧君は、左の脚と腰を動かないようにそれぞれの手でガッチリと掴んだ。
「うぅ……っ、慧君、く、苦しい……」
「ちょっと待ってろ」
慧君はそう言うと、私の腰と脚を掴んだまま、少し私の身体を上へ上げた。
そうして出来た背中の隙間に、慧君は自分の膝を入れた。
「どう? これなら苦しくないだろ?」
ちょうど慧君の折り曲げられた脚の上に、私の背中が乗っている状態で、全く苦しくないと言ったら嘘になるが、先程よりはあまり苦しさは感じられなかった。
なので、私は軽く頷いた。
はぁ、と息を付いた私に、慧君はニコッと笑うと───そのまま足の付根に顔を寄せる。
「ひゃぅぅ!?」
甘い痺れが、体を襲う。
ペロペロと子猫がミルクを飲むみたいに、音を立てながら美味しそうな顔をしながら、慧君は私のアソコを舐めていた。
舌全体で愛撫される感触に、全身に鳥肌が立った。
「んあぁぁっ、あっ、あ、け……いくん……あ? ひゃぅ!? や、あ、やぁ! やだ、けいくんっ」
くちゅっ、ぬちゅ、くちゅくちゅ、と、卑猥な水音が私の耳を犯す。
涙をながしながらイヤイヤと首を振ると、漸くアソコから口を離して顔を上げた慧君と視線が合った。
しかし……私のアソコと、慧君の少し開いた口元から覗く舌とを結ぶ透明な糸を見た瞬間、私は恥ずかしさで顔を横に向けた。
そんな私の行動を見た慧君は、クスっと笑うと、もう一度顔を落として私のアソコに音を立ててキスをした。
「今日は、俺が歩を気持よくイかせてやるよ」