夫の正しい躾方 07

 
 この頃、慧君が家に帰って来る時間が早くなった。
 たまに遅くなったとしても、嗅いだことが無いような香水や石鹸の匂いもしてこない。
 どうやら、『躾』が思いのほか上手く効いているようだ。
 買い物帰りの道すがら、そんな事を思いながらフフフと笑って歩く。


 今日は慧君の会社の同僚の人達が、家でご飯を食べて行く予定になっていた。


 夕食に必要な食材を買い終えると、私はルンルン気分で家へと帰途に着いた。
「ただいまぁ〜」
 誰も居ない家の中へと向かって声を上げながら、大きく膨らんだ買い物袋を台所の上に置き、今日使わない物だけを冷蔵庫の中に入れていく。
 鼻歌を歌いながら、壁に掛けていたエプロンを手に取り、身に付けた。
 少し長い髪を片側にシュシュで結び、手を洗って調理に取り掛かる。
 今日は和食を出そうと決めていた。
 鮪(まぐろ)と鰤(ぶり)の刺身と、サザエの壺焼き。筑前煮やあさりの酒蒸し、きんぴらごぼうにふろふき大根、揚げ豆腐の味噌汁などなど、殆どが慧君の大好物なのであった。
 台所にまな板と包丁を出し、買い物袋の中から今日使う食材を取り出して、早速私は調理に取り掛かった。



 それから2時間程時が経ち───。

 テーブルの上に、出来上がった料理が並べている最中に、玄関の鍵が開く音がした。
 玄関から、ただいまぁ〜と言う声がして、直ぐに慧君がドアを開けて居間に入って来る。
「あゆ、ただいま」
「お帰り、慧君」
 パタパタと小走りで近付き、慧君が持っている鞄とコートを受け取る。
 そのまま踵を返して物を隣の部屋に置きに行こうとした時、呼び止められた。
 何だろうと思って顔を上げたら───チュッとキスされた。
 慧君の行動に驚いて固まっていると、靴を脱いで居間に入って来た新谷さんとと古嶋さんが、目を丸くして私達を凝視していた。
 ボムっと私の顔が赤くなる。
 いくら慧君に“あんなコト”をしているとはいえ、他人にキスをしている所を見られるのは恥ずかしかった。
 居たたまれなくて、その場から一時退避しようかとした時、グッと肩を掴まれた。


「この頃、仕事から帰って来たらキスするようにしてんだ」


 慧君が、急にそんな事を言った。
 別に、慧君が仕事から帰って来ても『お帰りのキス』などしていない。
 というよりも、したことがない。
 驚いて慧君を見上げれば───慧君は、柔和な表情には似つかわしくない鋭い眼差しである一点を睨んでいた。
 視線の先を辿ると、それは古嶋さんであった。
 慧君の行動と、古嶋さんの強張った表情を交互に見ながら、仲が良かった彼らの間に一体何があったのだろうと思った時───。

「何だよお前! 独り身の俺に見せ付けてんじゃねーよ!」

 新谷さんがプリプリと頬を膨らませて怒った。
 クソーっ俺も早く嫁さんが欲しい! と叫ぶ新谷さんに、慧君は笑いながら頑張れと言いながら、私の肩を離してくれた。
 私はその隙を見逃さずに、慌てて皆に声を掛けた。
「あ、あの! ご飯がもう出来てますので、冷めないうちに食べましょう」
 皆さん手を洗ってから、お好きな席に座って下さいねと言ってから、私は鞄とコートを隣の部屋に置きに行ったのであった。

「はぁ〜。いつも思うけど……料理、上手ですね、歩さん」

 私が作ったご飯を食べながら、田中さんがそう呟いた。
 そして、お前が羨ましいよと慧君を見詰める。
 聞いた話によれば、田中さんの奥様はお料理が苦手らしく、テーブルの上に並べられる料理の7割が冷凍食品なんだとか。
「ははは、今日は歩の手料理を鱈腹食って行け」
「サンキュー」
 そんな取り留めもない話をしながら、慧君たちは料理を食べながらお酒を飲んで過ごしていた。

 そして───3時間も経つと、皆ほろ酔い状態で顔を赤くしていた。

「うわぁ〜。もうこんな時間か」
 時計を見た田中さんが、奥さんが帰りを待ってるから帰んなきゃと言って席を立つ。
 それを見た新谷さんも一緒に立ち上がる。
「もう帰んのか?」
「あぁ。この時間だと、ぎりぎり終電に間に合うしな」
「歩さん、遅い時間までお邪魔しました」
「いぇ、またいらして下さいね」
「はい」
「有難う御座います」
 田中さんと新谷さんはコートを着ると、ふと、床に倒れている人物に目を留める。
「おい、古嶋! 起きろ!」
「帰るぞぉ〜」
 酔い潰れて床に眠る古嶋さんに、2人が起こそうと肩を揺さぶる。
「明日はどうせ休みだし、今日はこのまま泊まらせるから、お前らは帰っても大丈夫だよ」
「いいのか?」
「あぁ」
 慧君の言葉に、2人はそれじゃあお言葉に甘えてと言って帰って行った。
 私は2人をお見送りした後、空いている部屋にお客様用の布団を敷いて、そこに古嶋さんを寝かせるように慧君にお願いした。
 そして、慧君が古嶋さんを寝かせている間に、茶碗洗いやらゴミ出しなどを済ませたりして、全てが終わってから漸く一息つく事が出来た。
「お疲れ」
「あ、慧君」
 古嶋さんを寝かしつけてきた慧君が、ソファーで寛いでいた私の体に後ろから抱きついて来て、肩に顔を埋める。
 さらさらの髪が、頬を擽った。
「……あゆ」
 慧君は掠れたような声を出すと、手を私の胸に置いて、下から掬い上げるような感じで揉んできた。
 胸全体を包むようにして揉みながら、時折指先で中心を弾くようにする。
「ねぇ……あゆ……しよ」
 首元を舌で舐められ、ブルリと体が震えた。
「クスッ。あゆ、首の方が感じる?」
「っや……!」
 そう、私は胸を触られてもあまり感じない。
 よく小説なんかを見ても、ちょっと触られたくらいで濡れちゃう程感じてしまう表現があったが、私はそんな事一度も無かった。
 ちょっとくらい気持いいかなぁ〜? とは思えるようになって来たけど、感じる程でもない。
 まぁ、胸の先を弄られたら、ピリピリした感じはするけど。
「け、慧君。古嶋さんがいるんだから……んっ……今日は、止め───うむっ」
 首を竦め、熱い舌から逃れようとしたら、慧君に顎を掴まれて苦しい体勢でキスをされる。
 卑猥な水音を立たせながら、慧君の口付けが深くなる。
 息苦しくなってきた頃───慧君が漸く唇を離してくれた。
 口の端に垂れた、飲み込めなかった涎を舐めとりながら、慧君はクスリと笑う。
「このまま此処でする? それとも、寝室でする?」
「……寝室で」
「了解」
 諦めたように答えれば、慧君に抱き上げられて、そのまま直行で寝室に連れて行かれた。




「……んくっ……あ、やだ、やめっ……ひゃぁぁ!?」

 薄暗くした寝室のベッドの上で、全裸になった慧君が両腕を縛られ嬌声を上げていた。
 その声を聞きながら、私はショーツにブラという格好で慧君の身体の上に体を寄せていた。
 ぷくっと立った小さな乳首を舌先で突付きながら、左手で『慧君』を扱き、右手の親指でお尻の穴を揉み解していた。
「慧君、まだイッちゃだめよ?」
 グッと膨らんだ『慧君』の根元を締め上げて、射精が出来ないように止める。
 途端に苦しそうな声を上げるが、乳首をカリッと囓ると「ひんっ!?」と声を上げて背を仰け反らせた。
 噛んだ所を慰めるように舌で舐めてから、体をずらして『慧君』の先端を口の中に含む。
「んんーっ! くぅあっ、あん、あぁっ、あゆ……それ、や……んあぁ!」
 ペチャペチャと音を立てながら先端だけを舐めていると、女の子の様な喘ぎ声を上げ出す慧君。
 お尻の穴を揉みながら、口を窄めて、先端だけをじゅるるるっと吸い上げると、「くぅぅぅっ!」と啼きながら慧君はイッた。
 ただ、亀頭だけの刺激だったので、根元を締めなくても射精することは無かった。
 軽く体を痙攣させる慧君。
 口の中から『慧君』を離すと、私はお尻からも手を離し、慧君の口に軽くキスをした。
「気持よかった?」
「…………ん」
 荒く息を突きながら、トロンとした目で頷かれ───私の子宮がキュンと疼いた。


 もっと、慧君が淫れる姿が見たいわ。


 一度慧君から体を離して、ベッドの側に置いていたウェットティッシュを取り、そこから数枚抜き取ってお尻の穴周辺を綺麗に拭いた。
 そして、右手に使い捨ての薄いゴム手袋を嵌めてから、力が抜けた慧君の両脚を掴み、少し上に向ける感じで大きく広げた。
「───ん?」
 その時、部屋の外で何か物音が聞こえたような気がしたが、ドアの方を見ても、少し隙間が空いているぐらいで何もなかった。
「気のせいかな?」
 私は気を取り直して、ジェルを手とお尻の穴にたっぷりと掛けた。
「んっ!」
「冷たかった?」
「大丈夫」
 声を出し、お尻の穴がきゅっと閉じたのでそう聞いたのだが、慧君は首を振って熱い眼差しで私を見詰めていた。
「それじゃ、いくよ?」
 くるくると穴の周りを撫でながら、小指をそっと中に埋める。
「……くぅっ」
 ゆっくりと小指を根元まで入れていく。
 それから、ピストン運動を開始した。
「うぅぅっ……く、うぅ……」
「痛い?」
 異物感が強いのか、眉間に皺を寄せている慧君に、私は指を動かしながら確認する。
 私は、慧君に“こんな事”をしているけど、痛い思いだけは絶対にさせない様に心がけている。
 多少の傷みは快感を伴うこともあるかもしれないけれども、不必要な痛みは唯の苦痛になってしまう。


 まぁ、性癖がMな人ならいいのかもしれないけど、慧君はどちらかと言えば、痛いのにめっぽう弱い方だ。

  
「大丈夫そうなら、中指を入れるからね」
 コクンと頷く慧君を見てから、私は小指を一旦穴から引き抜いた。
 それから直ぐに、中指を入れる。
 ぐぷぷ、とジェルをの音が穴から聞こえてくる。
「……はぅっ」

 先程よりも太く、長くなった指に、喉を仰け反らせているが、私はピストン運動を開始する。
「ん、ん、ん、ん、はぁぅ……ん、んぁ、あっ、あゆ、そこは……くっ」
「うん。ここ、気持ちいいよね」
「やめ、やめて! ああぅ! それ……あぅ! ぁ、いじょ、ひぐぅ……っ!」
 私は慧君の良い所を、ある程度把握していた。
 そこを集中的に指の腹で擦り付けると、半勃ちだった『慧君』がむくむくと大きくなり、触ってもいないのにお腹につく程大きくなった。
「あぅ、あ、あ、ひぅっ……あ、あゆ、んあぁ! ぁぅ、……もぅ、我慢でき、な……」
 目元に涙を溜めて懇願する慧君に、私は「イッて」と言いながら指の位置をずらし、さっきよりも優しく前立腺を刺激した。

「あ゛あああぁぁあぁっっ!?」

 前立腺を刺激した途端に、慧君は一瞬にして達してしまった。
 びゅくびゅくと飛び散る白濁液が、慧君のお腹と胸元を白く染め上げる。
 私はビクビクと動きながら射精し続ける『慧君』と、下に付いている袋を握ると、最後まで出し切るように揉んだり扱いたりした。
「あ? やっ! やめ、今はまだ……はひゃぁぁぁ!」
 慧君は腰を突き出し、最後にもう一度ビュビュッと白濁を飛ばした。
 ムワッと、独特の匂いと、荒い息遣いが室内に響く。
 額にくっ付いた髪を左手でどかしながら、私は慧君に口付ける。
 それに答えるように慧君の口が開き、私達はお互いの舌を絡ませた。
「ん、んん…… 」
「はぁっ……くふん、んちゅ」
 暫くそれを楽しんだ後、私は顔を上げて慧君を見下ろした。


「さっ、慧君。次は何回我慢できるかな?」
 

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